整形外科について | 和歌山県立医科大学 整形外科学講座

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整形外科について

基礎研究と臨床研究

医学研究を大まかに分類すると基礎研究と臨床研究に分けられます。

整形外科学における基礎研究は、疾患の病態や外傷の発生メカニズムの解明や、その治療法の開発を目的とし、実験動物や細胞を材料に組織化学、分子生物学、生化学、バイオメカニクス、細胞工学、行動評価学など様々な手法を用いて行われます。
最近よく耳にする遺伝子ゲノム解析も基礎研究の一つです。

一方、臨床研究は疾患の発生頻度や診断法、手術を含めた治療法の有効性を明らかにすることを目的とし、主に患者様から得た組織や血液、情報(臨床症状や各種画像、手術による改善度)を分析するものです。ある疾患に対して2つの治療法が存在し、どちらが優れているか解っていない場合には、それぞれの治療法を行った患者様の結果を比較することも臨床研究の一つです。

臨床研究は、患者様のご理解とご協力なしに行うことはできません。

医学研究

和医大整形外科学講座の特色

脊椎?脊髄疾患、関節疾患、手の外科など

長寿社会が達成された現在、人々は生活の質の改善を求めており、運動器疾患の治療と撲滅は最重要課題とされています。
和歌山県立医科大学整形外科はこの社会的要求に応えるべく、脊椎?脊髄疾患、関節疾患、手の外科などに関する様々な研究活動を行っています。

なかでも、脊椎?脊髄病の病態解明と治療方法の開発は重要なテーマの一つであり、動物モデルを用いた腰部神経根性疼痛メカニズムの解明、細胞組織工学による椎間板再生、骨形成タンパクと人工骨の脊椎固定術への応用、パッチクランプ法(単一細胞レベルで神経活動を観察する電気生理学的手法)を応用して脊髄内痛覚伝達機序の解析や脊髄損傷急性期における病態の解明と治療法の開発を行ってきました。

臨床研究では電気生理学的手法を用いて脊椎?脊髄手術をより安全に行うことに役立てた(脊髄モニタリング法)ほか、臨床症状や画像検査だけでは診断が困難な脊椎?脊髄疾患の補助診断法を開発中です。低侵襲手術の研究?開発にも力を注いでいます。
また、外来患者数が非常に多いにも関わらず、その発生割合や治療しなかった場合の自然経過が不明であった腰部脊柱管狭窄症の疫学調査を東京大学と共同で行っています。
そのほか、関節外科、手の外科分野においても優れた臨床研究を行っており、日常診療に役立てています。

地域医療への取組み

高度先進医療の地域医療への還元

和歌山県立医科大学整形外科では「高度先進医療の地域医療への還元」をスローガンに様々な活動に取り組んでいます。

まず県内各地の16の基幹病院に、和歌山県立医科大学整形外科で卒後臨床研修を終えた医師を派遣(65名、2017年現在)することにより、地域の皆様に大学病院に準ずる高度医療を提供しています。
また、病病連携?病診連携を強化するべく新患外来枠の拡充に努め、外部からの紹介患者様を受け入れています。和歌山県立医科大学整形外科は高度医療として整形外科分野の低侵襲手術の開発と教育に取り組んでおりますが、特に脊椎内視鏡手術では技術水準、手術件数とも全国トップレベルであると関係学会で評価されています。脊椎内視鏡手術により、患者様は手術中の出血や術後の創部痛が大幅に軽減される上、手術のための入院期間が従来の半分(1週間以内)まで短縮されます。

このような事情から最近では、これまで手術を受けることを躊躇されていた高齢の方が手術を希望し、来院されるケースが目立って増加しています。和歌山県立医科大学整形外科では患者様のニーズに応えるべく、関連病院も含めた医師の教育と技術講習を行っております。

救急医療の充実は各地域の皆様にとって非常に重要な課題です。
和歌山県立医科大学整形外科は和歌山県立医科大学救急集中治療部との協力体制の下、緊急手術を要する整形外科的疾患や高度外傷の治療にあたっています。

平成15年度からのドクターヘリ導入により紀伊半島地域の救急医療体制は飛躍的に向上しましたが、和歌山県立医科大学整形外科では現在2名の整形外科専門医を救急集中治療部に出向させて初期治療にあたっているほか、大学での急性期治療を終えられた患者様が安心して、地元の医療機関でのリハビリテーションに移行できるように、先に述べた病病連携?病診連携のシステム強化を行っています。

最後に、和歌山県立医科大学整形外科が地域住民の皆様を対象に行っている啓発活動について紹介します。
統計によりますと日本国民が医療機関を受診する3大愁訴は腰痛、肩こり、四肢関節痛とのことで、整形外科疾患に対する正しい理解が、疾患の発症予防、重症化の予防という観点から重要です。和歌山県立医科大学整形外科では毎年10月に一般市民を対象に「肩こり」や「腰痛症」など身近なテーマで講演会と無料相談会を実施しています。
なかでも腰痛や下肢の疼痛?しびれによる歩行困難は日常生活を著しく障害しますが、その原因疾患として腰部脊柱管狭窄症が挙げられます。和歌山県立医科大学整形外科では平成17年度より公衆衛生学教室と共同で和歌山県山間部地域における腰部脊柱管狭窄症の疫学調査を実施しています。腰部脊柱管狭窄症の実態があきらかになれば、地域の皆様のみならず日本国民全体にとって有益な情報となると考えております。